それから数日の間、星と一緒に色んなことをした。
森に探索に出かけてみたり、大きな木を見つけて登ってみたり、
夕方には小川のほとりで
ホタルを追いかけてみて、夜には星を眺めるの。
小中高と女子校育ちの私には”男の子”という存在は幼稚園止まり。
だから、あんまりよくわからなかった。
星は私のイメージする男の子とは全然違って、すごくロマンチスト。
星座に関する神話とかギリシャ神話が大好きで、たくさん話してくれる。
それでいて、ちゃんとたくましいところもあるんだよね。不思議。
でも、星は優しい空気を持った人だってことはわかった。
一緒にいて楽しい。空気を壊さないでくれる人。
もっと話をしたいと思える人・・・。
ぱたん。
そおっと家から抜け出して、音を立てないように湖に近づいた。
私の目的はこの湖で・・・自由になりたかった・・・けど、星と一緒にいる時間が長くて
なかなか水につかれなかった。 夜ならあたりに街頭はないし、わからない。
だから、今日は泳ごうと思って抜け出した。音がすると星にばれちゃうからね。
ぱしゃん・・・。小さな水音。
スイッと水中を泳いでいく。水の中はひんやり冷たい。夏の夜だなんて思えないくらいに。
そおっと、水面に顔を出して、空を見上げた。
今日も星は空を見てるのかな?
降り注ぐような星々、ぽっかりと浮かんだ月。今日は満月ね・・・。
キラキラと瞬く星に、ふんわりと輝く月。濃い紺色をした夜空は自然が描く「絵」なのかもしれない。
ちゃぷんっ。水面に仰向けに横たわる。しっぽがひらひらと水上をあおいだ。
「綺麗・・・」
星が瞬き、木の葉が音楽を奏で、風がやさしくなでる。
なんて素敵な夜・・・。
カタン
ばしゃんっ
小さな物音にびくっとして、大きな水音を出してしまった。
やばっ・・・
「雫っ・・・」
「!」
物音をたてた主は星だった。どうしようっ。
ぱしゃんっっ。
逃げ場は水の中しかない。そう思って見ずに潜り込んだ。
水中までは月の光は届かないからくらませるはず・・・!そう願って。
どうしようっ・・・しっぽを見られてなければいいけどっ・・・あの状況じゃそれは9割の確立でありえない。
人魚の・・・人間じゃない女の子の事なんかいやだよね・・・?どうしよう・・・明日から・・・。
心の中に渦巻く言葉がひとつ。
「嫌われたくない」
それはきっと、私が彼を好きだから。
でも、それは叶わぬ恋。ほら、「人魚姫」って悲恋のお話だしさ・・・。
神様・・・できることならば時間を戻して・・・そうしたら私、失敗などしないから・・・。
次の日。 その日一日、私は星を避けて過ごした。
家の中にいることが、これほど退屈だと思ったことは・・・これまでに一度もなかったのにね・・・。
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