キーンコーンカーンコーン・・・・・・。
終礼の終わりを告げるチャイムが鳴った。
あの日から、もう2週間以上経ったのに・・・まりあとのことは何も解決していない。
何だか毎日がつまらない。
家にいても、どこか寂しい。
失恋しちゃったような・・・何かが足りなくて・・・もどかしい日々。
まりあがいない生活なんて考えられなかったからかな・・・。
図書室に借りていた本を返しに行って、とぼとぼと廊下を進む。
正面玄関で、自分の下駄箱の扉を開けた。
「・・・・・・」
目に入ったのは、指定のローファーと、その上にちょこんっと乗っけられたメモ用紙。
封筒にもなんにも入ってない。
ただ、四つ折りされたメモ用紙。
ラブレター・・・ってことではなさそうね。
メモ用紙を取り出して、とりあえず、靴に履き替える。
ちょっとドキドキしながら、メモ用紙を開いた。
『あくあへ
桜並木の、いつものトコロで待ってます。
まりあ』
見慣れた文字がそう、並んでいた。
「・・・まりあ・・・?」
桜並木のいつものところ、っていうのはわたしたちのいつもの待ち合わせ場所。
ちょうど14本ある小さな桜並木の7本目。
ちょうど真ん中の桜の木の下。
そこが、いつもの待ち合わせ場所。
「あれ?あくあ。今帰り?」
「辰星・・・」
突然、辰星が背後から現れた。
「辰星、お願いっ。つきあって!」
「・・・・・・は?」
****************************
「あはは、なーんだ。そーゆーことか」
「ごめん、唐突すぎた・・・」
「いいって。まりあちゃんからのお呼び出しってことかぁ」
「うん・・・話してくれる気になったってこと・・・かな」
「きっとね。・・・ったく、心配性だなぁ、あくあは。大丈夫だって。まりあちゃんが
あくあと話そうって決めたから、こうやってラブレターで呼び出したんだろ?」
「もう、笑って言わないでよー。ラブレターじゃないし」
「あはは、ごめんごめん。でも、桜並木のいつものトコロってのはどこのこと?」
「うちの近くの小さな桜並木なの。14本しかないんだけどね。
その真ん中の7本目の木の下がいつもの待ち合わせ場所なの」
「そっか。姉妹の大事な場所ってところかな?」
「うん・・・そんなところ」
よかった・・・。
今、辰星がとなりにいてよかった・・・。
もし、わたしひとりだったら、あの場所までたどり着くのにどれだけの時間を要するかわからない。
桜並木の入り口から、どれだけの時間がかかることか・・・。
辰星がいるから、こうして笑って歩いていける。
フツウに接していられる。
桜並木の入り口で歩みを止めた。
「ほら、行って来い」
「ん・・・・・・」
ぎゅっと辰星の手を握った。
不安なの。
恐いの。
「大丈夫だって。俺、ここにいるから」
「ホントに?」
「ああ。ここで待ってる。だから安心して行って来い」
「・・・・・・」
ちゅっと軽く、額にキスをしてくれた。
「な?」
「・・・うん。行ってくる」
するっと手をほどいて、一歩桜並木に足を進めた。
青葉がカサカサと風邪に揺られて音を立てる。
入り口から7つ目の真ん中の桜の木。
いつもの待ち合わせ場所。
そこに、まりあが立っていた。
久しぶりに、ちゃんとまりあの顔を見たよ・・・。
ねえ、まりあ。
ちゃんと教えて。あなたの思ってること。
わたし、もう隠し事なんてしないから。
全部ちゃんと、話すから。
わたしから言うよ、「ごめんね」って。
大丈夫。
辰星にパワーもらったから。
認めてくれた人がいる。
それだけで嬉しくなる。
好きだって言ってくれる人がいる。
それだけで、救われる。
まりあがわたしを嫌いになっても、
わたしはまりあのことが好きだからね・・・・・・。
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