「あうう〜・・・」
「なーに、言ってるのよ、みあ!」
「あみぃ・・・なんなのよう、あのテストは」
「さあ?よくわからないわ。いろんなものやりすぎて記憶にないし」
「いったい何のテストなのよーう・・・」

隼人の言っていた試験。
まったくよくわからなかった。
とりあえず、ペーパテストはばっちり解けたし、アンケートみたいなものだった。
実技は、試験官さんが来てくれて、ありとあらゆるテストを受けた。
リンゴを出せとか、ものを宙に浮かせろとか、箒で飛べ、変身しろ、衣装替え・・・などなど。
百ぐらいやったんじゃないあかなぁ・・・。
中には上級生しかやっていないものまであって、呪文を教えるからやって、と言われたりもした。
できたものもあるけど、できなかったものが大半。
これがホントに成績につくんだったらあたしは間違いなく落第するかもね・・・。


「今日のテストって一体何の役に立つんだろう?」

あみが首を傾げて言った。

「さあ・・・クラス分けでもするんじゃない?エリートと落ちこぼれ」
「みあったら・・・それならあんなにテストする必要ないでしょう?」
「あ、そっか。ま、いいじゃない。おわっちゃったもんは仕方ないよー」
「そうね」

何でも前向きに考える。 コレがあたしの考え方。
だって、一秒後はもう過去なんだよ?
一秒先は見えないんだよ?
過去に戻れるわけないから、だから、未来のこと、一秒でも先のことを考えようって。
昔のことは変えられないけど、未来はいくらでもかえていけるんだもんっ。
だけど、こんな軽い考え方だからなのか。

この試験があたしの運命を揺らがすものになるとは思いもしなかった―――。




それから2週間。
普通に授業は進み、普通に修行の毎日。
あたしはまた失敗ばかりしている。

「先日行われた試験結果がきたから返すぞー。ちなみにこれは能力検定みたいなものだから判定結果がでてるぞ」
「ええ〜っ」
「きいてなーい」
「ただの試験じゃないのぉ?」

ブーイングの声が飛んだ。
そんななか、大きな声で先生が順々に名前を読み上げた。

「みあ」
「はーいっ」

先生から大きなプリントを一枚受け取る。
一瞬。
先生が曇ったような表情をしたのが見受けられた。
なんだろう・・・ 変なこと書いてあったのかな・・・。
席にもどって、たたんであったプリントを開く。

「!!??」

思わず、目を見開いてプリントに釘付けになった。
ずらーーーっとならんだ魔法試験項目。
左上、そこに総合結果が打ち出されてる。

『判定不可能』

その文字が大きく印刷されていた。
うそうそうそっ。
そんなに成績悪かったっけ?
急いでプリントに目を通す。
学科・・・は結構良い点数取ってるじゃない。
魔法史も歴史も国語も数学も化学も・・・他の人よりは上だって思ってる。 (それしか成績取れないもん)
性格判断も、ちゃあんと魔女にむいてるってでてる。
でも、そこから先のながーい魔法実技試験。
そこから全部、まちまちな成績。
できてないもの、よくできてるもの、まるっきりできなかったものや、完璧なもの・・・。
でも、ちゃんと個々の成績はでてるんだから、総合結果『判定不可能』はひどいんじゃない?
プリントともんもんとにらめっこを続ける。

「みあ、あとで教官室まできなさい」
「・・・はい・・・」

あーあ・・・お呼び出しかぁ。
ついてなーい。
きっと、『もっとしっかりやれ』って言われるんだわ。



ホームルームのあと、しぶしぶ教官室に向かった。

「しつれーします」
「ああ、みあ。こっちだ」
「せんせー・・・あたし・・・」
「いいから、一緒に来なさい」

先生に連れられて教官室を突っ切る。
奥の方には個室があって、窓でこっちから見えなくする暗幕魔法がかかってるみたい。
そこに通された。 すると、ひとりの男の人が座っていた。

「おまたせしました、みあを連れてきました」
「ありがとう。座って」

すすめられるがまま、ソファに座る。

「はじめまして、みあさん。大樹と申します。魔法潜在能力検定試験の監督です」
「は?まほうせんざ…」
「魔法潜在能力検定試験です」

な、長くてよくわかんないよ・・・。

「はあ・・・で、なにか?」
「先日受けられましたのを覚えてらっしゃいますか?」
「もちろん。あんなうざった・・・じゃなくて、覚えてます」
「その結果をご覧になりましたよね?」
「はい・・・あの・・・」
「?」

にこにこと笑いながらあたしのことを見てる。
なんなのよーう・・・。

「判定不可能っていったい・・・」
「見ての通りです」
「成績そんなに悪かったですか?いちおー、できる魔法もあるし、 できない方が多いけど・・・筆記はよくできたと思ってるし、性格だって魔女判定でたしっ・・・・・・」

大樹さんは、相変わらずニコニコしてあたしを見てる。
笑顔魔法でもかかってるんじゃないの?

「やっぱ・・・魔法の使えない魔女なんかいらない・・・ってことですか・・・」
「あなたは見ていてとてもおもしろいですね」
「は?」

思いがけない一言に首をかしげる。
何言ってるの?
この人ってば、人のこと呼びつけておいて本題に入らない気??

「まるで百面相してるみたいですね。おっと、本題に入りましょうか」
「はあ・・・」
「あなたの判定不可能について説明しに来ました」
「それは・・・どーも・・・」

「一言で言って、みあさん。あなたは天才的です」

「あたしが天才!?落ちこぼれの間違いですよー」

ケタケタ、笑っちゃう。
あたしが天才的なんてあり得ないもん。

「いえいえ。あなたは天才的です。どーしてこんなに簡単な魔法ができないで、高度魔法ばかりできるんですか?」
「え?ああ・・・わかんないです。気が付いたらできました」
「箒で空を飛ぶこと、何もないところからモノを召喚すること、 モノを生き物にすること、衣装替えをすること、どれも高度魔法の中のひとつです」
「知ってます・・・」
「なのに、どうして火が出せないんですか?」
「う・・・」

そんなこといったって・・・。

「なんでモノを浮かせられないんですか?」
「うう・・・」

できないものはできないのよぅ・・・。

「どうやったって静止魔法のほうが簡単ですよ?」
「もーうっ!気が付いたらできたんだってばっ!!あたしにはわかんないよっ」

思わず、立ち上がって叫んでた。
だって・・・!

「こ、こら!みあっ」
「あ、いけないいけない・・・」

ぽすんっ。座り直す。
だって、この人、なんかムカムカするんだもん・・・。

「気が付いたらできた・・・どのくらいの時に?」
「・・・5歳くらいの時には飛べたけど」

ああ、もう、イライラしてきたーっ。
その、にこにこした笑顔がムカツク!!

「やっぱり君は天才だね」
「だから、何?」

「きみは魔力がとても大きいんだ」

「はい?」
「だからその魔力に見合う優しいもの・・・一般で言う高度魔法ができて、簡単魔法ができないんだ」
「待った。意味わかんない・・・」
「えーと、簡単魔法じゃ簡単すぎる・・・というか、魔力を押さえ込むことが難しいんだ。 君は普通の人の魔力よりも強い魔力を持っているから、 魔力を押さえ込まないと暴走して簡単魔法が使えないんだ」
「はあ・・・」
「君はまだ幼いから魔力の制御の仕方をあまり知らないんじゃないかな? 魔力を自由自在に使えるようになればきっと簡単魔法もできるようになる」
「つまりー・・・あたしにとっての簡単は高度魔法領域だってこと?」
「そう!魔力を一番少なく使っても高度魔法が使えちゃうんだよ」
「それ以下にしないと簡単魔法はできないってこと・・・?」
「そう!ものわかりがいいねー」

いや、このぐらい当たり前に理解できるだろう・・・。
あたしの魔力は人一倍強いってこと・・・か。
簡単魔法は超簡単魔法だから魔力が大きすぎて使えないんだ・・・。
じゃ、高度より上なら使えるってコト?
でも、あれは年齢制限があるからダメか。

「じゃあ、あたしどうすればいいんですか?」
「いやー・・・この検定試験では今までこんな例がなくってね・・・ 具体的な処置方はないんだけど・・・簡単だよ。魔力のコントロールの仕方を学べばいいんだから」
「そっか・・・そうすればみんなと同じようにできるようになるんだ!」
「この学校でコントロール技術を知っているのは・・・隼人と校長と・・・そのくらいだな」
「え?隼人?」
「ああ、みあは知っているんだったな。隼人はみあと逆で、あまり魔力が発揮できなかったんだよ。 もともと人並みの潜在能力はあったからコントロールさえできればよかったんだ。 隼人は校長先生に習ったんだよ。校長はこの国でもトップレベルの魔法使いだから、いろいろなことを知っている」
「そうだったんだ・・・」
「じゃ、隼人に習いなさい。話しておこう」
「は、はいっ。よろしく・・・お願いします」
「きみの能力がどうなるか楽しみだよ。また僕も来させてもらいますね」
「ええ、構いませんよ。いつでも来て下さい」

ちょーっとまった!
このニコニコ笑ってるにーさんがまた来るって!?
もー、来なくていい!。
この人調子乱されるんだよ・・・。