そして、約束の時間、約束の場所。
夏のあの日と同じ場所。
冬の午後4時半はもう日がだいぶ傾いていて、空気も一段と冷えたような気がする。

「まりん!」

声をかけられて顔を上げると、久しぶりに会う聖夜君が、ちょっとした大荷物を抱えて立っていた。
どうやらキャンバスが入ってるみたい。

「聖夜君、えっと、こんばんは?」
「それにはまだ早いんじゃないか?えーと、ちょっと遅れたよな。ごめん」
「ううん、大丈夫」
「・・・・・・行こうか。早くしないと本格的に暗くなる」
「うん」

一瞬、聖夜君があたしのことをじっと見つめた気がしたけど、特に何もなく歩き出した。
・・・・・・綾ちゃん、作戦は失敗かもしれないよ。
二人並んで歩くけど、聖夜君の抱えたキャンバスがあたしたちをさえぎった。
なんだかな・・・。


夏にも来た、銀河さんオススメの穴場スポット。
さすがに真冬に海に来よう、それもクリスマスに!なんて物好きはいなくて、海には冷たい風が吹いてるだけだった。

「・・・暗いね」
「今日はちょっと曇ってるしな・・・」
「残念」

冬の冷たい風。
星のない空。
真っ黒に見える海。
隣には聖夜君がいるのに、どうしてこんなに・・・さみしいって思ってるんだろう。
会えたのに。
いつも通りなのに。
どうして・・・。

「今日は冷えるな。・・・寒くない?」
「・・・うん、寒い、かな」
「・・・荷物も邪魔だし、じいさんのカフェ行かないか」
「うん」

どうして、かな・・・会話が弾まない。
会いたかったのに・・・色々、聞こうと思ってたのに・・・。
少し落ち込んだ空気のまま、あたしたちは鳥籠カフェに向かった。