「で、なんでクリスマス・イヴの昼間にあたしと会ってるのかな?まりんさん」
「えっと・・・聖夜君、昼間は絵画教室の方があるっていうから・・・」
「あたしは時間つぶしってわけね」
「そ、そういう・・・・・・わけです」
「素直でよろしい」

12月24日。
クリスマス・イヴ。
時刻は午後12時半。
綾ちゃんに“お昼一緒に食べない?”と声をかけて待ち合わせた。
かれこれ遡ること四日。
聖夜君に電話で待ち合わせをどうするか聞いたところ、急遽絵画教室の方で特別講座があるから昼間会えなくなったと言われたの。
そうなれば仕方ない・・・ということで、誕生日の時と同じく、待ち合わせは夕方になった。

「で?空井君とは何時に待ち合わせなの」
「4時半」
「全く、空井君に会ったら一言もの申してやりたいわ!」
「いいのいいの、仕方ないもん。会えないって言われたわけじゃないし」
「まりんはー・・・まったく・・・。いいわ、じゃあ、お昼食べたらウチにおいで」
「?」
「こうなったら、空井君が絶句するくらいまりんを可愛くするんだから!! ああ、誤解しないで、今がかわいくないって言ってる訳じゃないから。服もよく似合ってるし」
「・・・ありがと、綾ちゃん」
「じゃ、行こ!見てなさいよ、空井君・・・!」
「えっと・・・なんか聖夜君の株がた落ち?」
「当たり前でしょ!結局ちゃんと会えてないっていうし。何してるのよ、あの男っ」
「あはは・・・」

そう、結局、あの試験最終日以降、ちゃんと聖夜君に会えてない。
試験後は短縮授業になっちゃって、ますます学校内で会う時間なんてないし、 不規則になった放課後の時間のせいで鳥籠カフェでも会えないし、家の方向は逆みたいだし、もう散々・・・。
でもね、別にそっけないとかじゃない・・・と思う。
メールのやりとりはあるし、電話も出てくれる。
ただ・・・直接会えていないだけで・・・・・・。

「まりん、あたしが知らない空井君のことをまりんは知ってると思うし、 彼氏のいないあたしがどうこう言っても仕方ないかもしれないけどね?」
「なに?」
「ちゃんと言っていいんだよ。ううん、今日会ったらさ、ちゃんと言ってきなよ。会いたかったって」
「・・・・・・」
「会いたかったって、寂しかったって、そう言える権利をまりんは持ってるんだから。ね」
「・・・・・・うん、そうだね」

言える権利・・・か・・・。
どうしてかな・・・言おうと思えばいつだって伝えられたんだよね・・・。
会いたいって。
きっと、言えば、聖夜君はカフェまで来てくれただろうし・・・。
それなのに、あたしはそういう手段をとってこなかった。
会いたくないわけじゃない。
でも、すごくすごく会いたいって思ってる・・・わけじゃないのかもしれない。


綾ちゃんとお昼ご飯を食べて、その後は綾ちゃんのお家にお邪魔して、あれこれとオシャレをしてくれた。
まずはお風呂いってきて!なんて言われたときには驚いたけど・・・。
綾ちゃんいわく、髪はトリートメントすると断然艶が違うんだから!ということらしい。
ヘアケア、へアセット、ネイルにポイントメイク。
オシャレって不思議だね・・・今、とっても、“女の子”してる気がする。

「まりんはあんまりこーゆーの興味ないもんねー」
「・・・うん・・・でも、嫌いじゃないよ」
「知ってる。嫌いだったらあたしにいじらせないでしょ。まあ、まりんはメイク道具よりも本が好きってだけでしょ」
「その通り。でも、そうだね、今度あたしもトリートメントくらい買おうかな」
「文庫本一冊より高いよ」
「う・・・努力します・・・」
「よろしい」

マニキュアを乾かしている間、綾ちゃんがあたしの長い髪をブローしたり、コテをあてたり、色々と楽しそうにいじってくれた。
確かに、これなら聖夜君びっくりしそうだな・・・。
あたしひとりじゃ、とてもやらないことばかりだもの。

「ねえ、まりん」
「なあに?」
「・・・・・・ううん、いいや。よし、出来上がり!空井君の反応、今度聞かせてよっ」

そう言いながら、綾ちゃんがきゅっとリボンを結んだ。