水曜日。
真夏のカフェテリア。
アイスティーの氷が急速に溶けていく。
カランと涼しげな音を立てて。
「え!なに、じゃあ空井君と付き合うの!?」
「・・・うん。綾ちゃんには言っておこうかな・・・と」
「えー!いっがい!まりんと空井君のどこにそんな接点がっ!」
「まぁ・・・色々と」
「でもまぁ、お姫様抱っこしてもらえるような間柄だし・・・不思議はないか」
「綾ちゃん!」
「うーん、これはビッグニュースね・・・ああ、心配しなくても言いふらしたりしないって。そのうち、嫌でも知れ渡るでしょ」
「どうして?」
「空井君、有名人だもん。うちの学年の女子の間では」
「・・・あたしは知らなかったけど・・・」
「それは、まりんが本しか読んでないからよ。でも、ま、よかったね」
「ありがと」
「・・・・・・で?」
「え?」
ずいっと綾ちゃんが体を乗り出す。
思わず、あたしのほうが体を後ろへそらす。
な、に?
「誕生日になんで空井君とじゃなくてあたしと会ってるの?もしかして誕生日教えてないとか!?」
「ううん、知ってるよ。約束は夕方からなの」
「・・・・・・珍しいカップルね」
「?」
「一日デート、じゃないの?」
「あたしが夕日が見たいって言ったから」
「そーじゃなくって!!」
綾ちゃんが、はあっと大きくため息をついた。
何か、間違ってる?
別に、一日一緒にいなくても夕日は見れるし・・・。
「一日一緒なら、夕日だろうが何だろうが見れるでしょうがっ!ああ、ダメな子ねーっ」
「・・・・・・でも、待ち合わせ指定してきたのは聖夜君だよ?」
「あ、そう…何か用事でもあるのかしらね。じゃ、これから会うんだ」
「うん」
「よし!決まり!」
アイスカフェオレのグラスを空にして、綾ちゃんが立ち上がった。
な、何が決まりなの!?
綾ちゃんはいつもこうなんだから・・・!
「綾ちゃん!?何が決まり!?」
「バースデープレゼントよっ。実は用意出来てなかったんだ、ごめん」
「う、うん・・・それで?」
「行くわよ、まりん」
「だから、綾ちゃん、順を追って話してよーっ」
「髪飾り、探しに行きましょ。プレゼントするから。で、我が家でおめかししてあげる」
「へ!?」
「うーん、楽しみっ。空井君驚かせなくちゃね」
「・・・・・・」
「わかった?」
「う、うん、わかった。ありがと、綾ちゃんっ」
あたしもアイスティーのグラスを空にして、立ち上がる。
綾ちゃんのちょっと強引なところ、好きだな。
その後、街で髪飾りをあーだこーだと綾ちゃんが選び(あたしはただいただけ・・・)
綾ちゃんのお家にお邪魔してスタイリング開始。
「お姉ちゃんって、コスメ集めが趣味でさ。だから使い放題」
なんて言って、お姉さんのお化粧品を持ってきて、あたしにメイクをする。
もちろん、ナチュラルメイクだけれど・・・。
ただ、それだけですごくオトナになった気分・・・。
そして、夕方には「ハッピーバースデー」と言って送り出してくれた。
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